[スマホdeキーヤー 開発者ホームページ]
by JN2MRJ (as of Nov. 29, 2024)

  スマホdeキーヤー本体
  (ローカルにダウンロード)

  かながわハムの集い2024で、「zLogとマイコンで令和の無線を楽しむ会」のブースにおいて、簡単な説明、資料の配布、リグへの接続例の実演を行いました。
  (ブースで配布した資料

  ハムフェア会場で、「zLogとマイコンで令和の無線を楽しむ会」のブースにおいて、簡単な説明、資料の配布、リグへの接続例の実演を行いました。
  (ブースで配布した資料
  インターフェース回路も頒布させていただきました(完売御礼)。
  (頒布したインターフェース回路の説明書

1. 「スマホdeキーヤー」とは
 スマートフォンをアマチュア無線機に接続してモールス符号の送信による電信の通信を行うためのソフトウエアです。
 もともと、無線機に電鍵を接続して手動操作でモールス符号を送信するか、無線機にPCを接続して、PC上のソフトウェアでモールス符号を送信していました。
 ときどき山に登って無線をすることがあるのですが、そのときには電話(音声による無線通信)による交信が中心なのですが、モールス符号による電信の交信をしたいこともあります。しかし、電信のために重い電鍵やPCを持って山に登るのはつらいので、なんとか軽い装備で電信ができないかと考えていました。
 登山時もスマートフォン(スマホ)は必ず持っていくので、これを使えば楽だとはわかっていましたが、スマホ用のちょうどよいアプリが見つからず、また、スマホを無線機に接続する簡単な方法もわかりませんでした。
 そこで、今回、HTMLとJavaScriptによる簡単なソフトウェアの作成と、無線機に接続するためのインターフェース回路の作成を試みました。普段あまり電子工作をしないので、試行錯誤によるインターフェース回路の作成は大変でした。
 なんとか最低限のものはできたので、今回公開することにしました。

2. 「スマホdeキーヤー」でできること
 「スマホdeキーヤー」は、スマホで使用することを意図していますが、ブラウザベースなのでPCでも動きます。自分のAndroid端末で開発しているので、iPhone端末だとまだ画面がやや見苦しいですが一応使えています。
 ホームページはインターネットのWebサーバ上にありますが、「スマホdeキーヤー」本体はHTMLファイル1本のみですので、ローカルに保存して、インターネット接続がない環境でも使用できます。
 動作モードとして、「スピーカー(試聴)モード」、「A1対応モード」、「F2対応モード」があります。
<スピーカー(試聴)モード>
 スマホのスピーカーからモールス符号の音を出力します。無線機がなくても、本ソフトが生成するモールス符号の音を試聴できます。
 また、スマホを無線機のマイクに近づけた状態で、無線機のFMモードで、PTT(無線機の送信ボタン)を押しながら本ソフトで音を出せば、それだけで電波型式F2Aの電波の送信になります。ただし、この使用法の場合、無線局免許の変更申請(届)の提出が必要になる場合がありますので、ご自身でよくお調べになってから使用されることをお勧めします。
<A1対応モード>
 スマホのイヤホン端子からの出力を後述のインターフェース回路経由で無線機のKEY端子に接続して、無線機のCWモードで使用します。無線機側の(セミ)ブレークイン機能を使って送信状態を制御します。送信される電波の電波型式はA1Aとなります。
<F2対応モード>
 スマホのイヤホン端子からの出力を後述のインターフェース回路経由で無線機のマイク端子に接続して、無線機のFMモードで使用します。PTT制御もインターフェース回路経由で行います。送信される電波の電波型式はF2Aとなります。

3. 「スマホdeキーヤー」の使い方
 [設定]ボタンで、各種設定を行えます。
 [ヘルプ]ボタンで、ヘルプを表示します。まだヘルプを書いていませんが、そのうち書こうと思います。
 [PTT]ボタンで、F2対応モード時のPTTのオン/オフを制御します。  [キー]ボタンで、単純に電鍵を押し下げた状態にできます。  [送信履歴]欄には、送信した文字列の履歴が表示されます。将来的には、この欄に交信ログを表示しようと思っています。
 [送信文字列]欄に文字列を入力してエンターボタンを押すと、その文字列をモールス符号として送信します。
 [M1]から[M5]までは、メッセージのメモリーボタンで、あらかじめ設定しておいた文字列を送信します。[設定]でメッセージを設定できます。
 [試行版ログ入力欄]は、将来、ログ機能を実装するために、試行的に設けたログ入力欄です。特にコンテスト用ログソフトを意識しています。スペースキーでCall欄とrNum欄の間を移動できます。Call欄でTabキーを押すと、M2のメッセージを送信してrNum欄に移動します。[↓]キーを押すと、M3のメッセージを送信して、ログ入力を確定します。エンターキーを押してもログ入力を確定します。

4. 「スマホdeキーヤー」が生成する音声信号
 本ソフトではスマホ内で音声信号を生成してスピーカーやイヤホン端子から出力します。本ソフトの各モードで生成する音声信号は以下のとおりです。
<スピーカー(試聴)モード>
 左右両チャンネルとも、送信するモールス符号の可聴音になります。デフォルトでは700Hzの矩形波になりますが、[設定]で、周波数やトーン波形(矩形波、ノコギリ波、正弦波)を変更できます。
<A1対応モード>
 右チャンネルに電信をキーイングするための矩形波の制御信号を出力します。制御信号のデフォルト周波数は3500Hzです。整流しやすく、また、左右チャンネル間クロストーク時の影響を低減するために高い周波数としています。
 この制御信号を、インターフェース回路内で、昇圧、整流して、トランジスタのスイッチング入力信号としています。このトランジスタのスイッチング機能で無線機の電信のKEY端子をキーイングしています。
<F2対応モード>
 左チャンネルには、<スピーカー(試聴)モード>と同じ音声信号を出力して、これをインターフェース回路経由で無線機のマイク端子に入力します。
 右チャンネルには、<A1対応モード>の制御信号と同様の音声信号を、送信中に連続して出力します。これをインターフェース回路経由で無線機のPTT制御に利用します。インターフェース回路も<A1対応モード>のKEY端子用のものを流用しています。無線機のマイク端子とPTT端子が分離している場合には、これをPTT端子にそのまま入力すればよいのですが、マイク端子がPTT端子も兼ねている場合には、それに合わせたインターフェース回路とします。たとえば、ICOMのIC-705やハンディー機の場合、送信時に、マイク端子を33kΩ(YAESUの場合は2kΩ、アルインコの場合は10kΩ)の抵抗を介してGNDに落とせばよいので、上記トランジスタのスイッチング機能でそのようになるようにします。
 無線機からFM音声の頭切れを防ぐために、モールス符号音よりも少し前にPTTをオンにする「送信前ディレイ」の時間を設定できます(デフォルトは500ミリ秒)。同様に、尻切れを防ぐために「送信後ディレイ」の時間も設定できます(デフォルトは250ミリ秒)。
 なお、無線機のFMモード時に自機からの送信音をモニターできない場合には、インターフェース回路のイヤホン出力端子にイヤホンを接続して左チャンネル送信音をモニターします。

5. 「スマホdeキーヤー」を無線機に接続するインターフェース回路
 手持ちの無線機である、ICOMのIC-705やハンディー機で使用できるインターフェース回路を試作しました。実験を通した試行錯誤で作成したのですが、改善のためのご助言をいただけると幸いです。
 
(試作版インターフェースの回路図(2024年6月9日版))

 
(試作版インターフェース回路の外観(左:初号機、中:改良版(ケース入り)、右:再改良版(ケース入り)

 
(ハムフェア2024頒布版インターフェース回路の外観)
 
 なお、「スマホdeキーヤー」を自分の無線機に接続して試してみたいけどインターフェース回路やケーブルを作るのは面倒だという方には、私のほうでインターフェース回路の試作品とケーブル一式を作成して無償でお貸しいたしますので、接続予定の無線機の型番(複数可)とともに、ぜひご連絡ください。
 8月24、25日のハムフェア会場(「zLogとマイコンで令和の無線を楽しむ会」(ブース番号 C-67))で展示、説明、有償頒布を行いましたが、まだ若干残っていますので、有償で頒布させていただくことにしました。このページの上のほうをご覧ください。

6. 「スマホdeキーヤー」の使用例
 (ICOM IC-705でのA1対応モードの例)

・インターフェース回路のKEY出力を普通のケーブル(3.5mm→3.5mm)のIC-705のKEY端子に接続
・IC-705はCWモード(電波型式はA1A)
・IC-705のセミブレークイン機能を利用して送信制御
・サイドトーンはIC-705のCW時の通常の音
 
 (ICOM IC-705でのF2対応モードの例)

・インターフェース回路のPTT用抵抗は33kΩ
・インターフェース回路のマイク出力をケーブル(3.5mm→4極2.5mm)(作成例)でIC-705のマイク端子に接続
・IC-705はFMモード(電波型式はF2A)
・インターフェース回路からマイク端子を通してPTT制御
・IC-705の送信音モニター機能を利用
 
 (ICOM IC-705でのF2対応モードでコンテストの交信の例)

・上記同様
・本ソフトの[試行版ログ入力欄]を利用
・JN2MRJ/1がCQを出して、JA1AGHから呼ばれて、コンテストナンバーを交換する例
 
 (ICOM ID-31でのF2対応モードの例)

・インターフェース回路のPTT用抵抗は33kΩ
・インターフェース回路のマイク出力をケーブル(3.5mm→3極2.5mm)(作成例)でID-31のマイク端子に接続
・ID-31はFMモード(電波型式はF2A)
・インターフェース回路からマイク端子を通してPTT制御
・ID-31では送信音をモニターできないので、インターフェース回路のイヤホン出力端子に接続したイヤホンで聞く
 
 (YAESU VX-3でのF2対応モードの例)

・インターフェース回路のPTT用抵抗は2kΩ
・インターフェース回路のマイク出力をケーブル(3.5mm→4極3.5mm)(作成例(その材料))(作成例2)でVX-3のMIC/SP端子に接続
・VX-3はFMモード(電波型式はF2A)
・インターフェース回路からマイク端子を通してPTT制御
・VX-3は送信音をモニターできないので、インターフェース回路のイヤホン出力端子に接続したイヤホンで聞く
 
 (YAESU FT-70DでのF2対応モードの例)

・インターフェース回路のPTT用抵抗は2kΩ
・インターフェース回路のマイク出力をケーブル(3.5mm→4極3.5mm)(作成例(その材料))(作成例2)でFT-70DのMIC/SP端子に接続
・FT-70DはFMモード(電波型式はF2A)
・インターフェース回路からマイク端子を通してPTT制御
・FT-70Dは送信音をモニターできないので、インターフェース回路のイヤホン出力端子に接続したイヤホンで聞く
 
 (ALINCO DJ-G7でのF2対応モードの例)

・インターフェース回路のPTT用抵抗は10kΩ
・DJ-G7には上記YAESUハンディー機と同様の接続でよいと思うが、作成したケーブルの4極3.5mmプラグがMIC/SP端子の奥まで入らないので、EDS-14互換の変換ケーブルでMIC端子とSP端子に分ける
・インターフェース回路のマイク出力をICOMハンディー機用に作成したケーブル(3.5mm→3極2.5mm)(作成例)で上記分けたMIC端子に接続
・DJ-G7はFMモード(電波型式はF2A)
・インターフェース回路からマイク端子を通してPTT制御
・DJ-G7は送信音をモニターできないので、インターフェース回路のイヤホン出力端子に接続したイヤホンで聞く
 
 (ICOM IC-9700でのA1対応モードの例)

・インターフェース回路のKEY出力を普通のケーブル(3.5mm→3.5mm)のIC-9700のKEY端子に接続
・IC-9700はCWモード(電波型式はA1A)
・IC-9700のセミブレークイン機能を利用して送信制御
・サイドトーンはIC-9700のCW時の通常の音
 
 (ICOM IC-9700でのF2対応モードの例)

・インターフェース回路のPTT信号はマイク出力の3.5mmジャックのRing(右チャンネル)へ出力
・インターフェース回路のマイク出力をケーブル(3極3.5mm→8ピンMICコネクタ)(作成例)でIC-9700のマイク端子に接続
・IC-9700はFMモード(電波型式はF2A)
・インターフェース回路からマイク端子を通してPTT制御
・IC-9700の送信音モニター機能を利用
 
 (ICOM IC-706でのA1対応モードの例)

・インターフェース回路のKEY出力を普通のケーブル(3.5mm→6.3mm)のIC-706のKEY端子に接続
・IC-706はCWモード(電波型式はA1A)
・IC-706のセミブレークイン機能を利用して送信制御
・サイドトーンはIC-706のCW時の通常の音
 
 (ICOM IC-706でのF2対応モードの例)

・インターフェース回路のPTT信号はマイク出力の3.5mmジャックのRing(右チャンネル)へ出力
・インターフェース回路のマイク出力をケーブル(3極3.5mm→8極モジュラーコネクタ)(作成例)でIC-706のマイク端子に接続
・IC-706はFMモード(電波型式はF2A)
・インターフェース回路からマイク端子を通してPTT制御
・IC-706は送信音をモニターできないので、インターフェース回路のイヤホン出力端子に接続したイヤホンで聞く
 
 (ICOM FT-817でのA1対応モードの例)

・インターフェース回路のKEY出力を普通のケーブル(3.5mm→3.5mm)のFT-817のKEY端子に接続
・FT-817はCWモード(電波型式はA1A)
・FT-817のセミブレークイン機能を利用して送信制御
・サイドトーンはFT-817のCW時の通常の音
 
 (ICOM FT-817でのF2対応モードの例)

・インターフェース回路のPTT信号はマイク出力の3.5mmジャックのRing(右チャンネル)へ出力
・インターフェース回路のマイク出力をケーブル(3極3.5mm→8極モジュラーコネクタ)(作成例)でFT-817のマイク端子に接続
・FT-817はFMモード(電波型式はF2A)
・インターフェース回路からマイク端子を通してPTT制御
・FT-817は送信音をモニターできないので、インターフェース回路のイヤホン出力端子に接続したイヤホンで聞く
 

7. 今後したいこと
 ・簡易パドル機能(スマホの画面をタッチ)の実装
 ・インターフェース回路の量産(開発協力者への貸与、頒布)
 ・ログ機能の実装
  ・特にコンテストログソフトのような機能の実装
   ・電話の交信もロギングしやすくする
   ・JARLコンテスト電子ログとのデータ連携
   ・他のPC用ログソフトとのデータ連携
 ・ボイスメモリー機能の実装
 ・USB・シリアルポートインターフェースの取り込み(大幅改造)
  ・CI-V/CATによるリグ制御
  ・キーイング、PTT制御の安定化
  ・USBバスパワー電源を利用したインターフェース回路の高度化

8. 免責事項
 本ソフトウェア及びインターフェース回路の使用により生じたいかなる損害(PCまたはスマートフォン等の故障、接続した無線機の故障、使用者のデータの消失を含むすべて)についても、開発者は一切責任を負いません。

9. 開発者について
 間野 裕一 (まの ゆういち)
   - JN2MRJ (1989年に愛知県で開局)
   - JA1AGH (2003年に東京都で開局)
   - N2YM (2004年に米国で開局)
 現在、神奈川県川崎市中原区在住。
 JA1AGHのコールサインで主にコンテストに参加しています。
 集合住宅5階のベランダのアンテナで運用しています。
  - X(旧Twitter) https://twitter.com/JN2MRJ
  - Web: https://mano.net/ham/jn2mrj.html
  - メール: mano@max.or.jp